こんにちは!ネットワークやセキュリティの世界へようこそ。インフラエンジニアとして日夜奮闘している方も、これからネットワークの仕組みを学ぼうとしている初学者の方も、日々の業務お疲れ様です。
今回は、現代の企業ネットワークにおいてなくてはならない存在となった「SASE(Secure Access Service Edge)」と、その心臓部である「SD-WANとセキュリティ機能の統合」について、じっくりとお話ししていきたいと思います。
「なんだかカタカナやアルファベットが多くて難しそう…」と感じていませんか? 大丈夫です!難しいパケットの構造や、英語だらけの仕様書はいったん脇に置いて、私たちの身近な世界に置き換えながら、一歩ずつ優しく紐解いていきましょう。
—
1. 郵便配達で例える「これまでのネットワーク」と「SASEの世界」
まずは、私たちが普段使っているデータのやり取りを、「手紙や荷物の配達」に例えて考えてみましょう。
昔ながらの「支店経由」の配達
昔の企業ネットワークは、いわば「すべての手紙を一度、本社の大きな郵便局(本社データセンター)に集めてから宛先に届ける」という仕組みでした。
支店からインターネットを見るにも、別の支店とやり取りするにも、わざわざ一度本社を経由し、本社にある頑丈なセキュリティチェックゲートを通っていたのです。
しかし、今はどうでしょう? クラウドサービス(Microsoft 365やSalesforceなど)が当たり前になり、社員はリモートワークであちこちからアクセスしています。この「全部本社経由」のやり方だと、本社の手続き窓口が大渋滞を起こし、通信がものすごく遅くなってしまいますよね。
SASEとSD-WANがもたらす革新
そこで登場したのが、SASE(サセ)という考え方です。
SASEは、ネットワーク(回線)とセキュリティ(門番)をひとつにまとめ、クラウドの向こう側(またはオフィスのすぐそば)でまとめて面倒を見てしまおうという画期的な仕組みです。
そのSASEのなかで、現場の交通整理を担当するのが「SD-WAN」です。SD-WANは、いわば「優秀なカーナビ」のようなもの。渋滞している道や遠回りの道を避け、その時一番早くて安全なルートをリアルタイムで見つけてデータを送り届けてくれます。
—
2. データプレーンの役割:現場で荷物をさばく「スーパー仕分け係」
さて、ここからが今回の本題です。SD-WANとセキュリティ機能がひとつになったとき、データプレーン(実際のデータが流れる通り道)では何が起きているのでしょうか?
データプレーンとは、いわば「郵便局の大きな仕分けレーン」です。次々と流れてくる荷物(パケット)を、一瞬で仕分けて、目的地へ送り出す場所ですね。
SASEのエッジデバイス(オフィスの出口にあるルーターのような機器)や、クラウド上のPoP(中継拠点)では、このデータプレーン上で「動的経路選択(SD-WAN)」と「セキュリティ検査(ファイアウォールやURLフィルタリングなど)」の2つの大仕事が、なんと同時に行われています。
同時処理のイメージ
1. 荷物の到着: 社員がクラウド上のアプリに向かってデータを送ります。
2. 安全チェック(セキュリティ): 荷物の中身に危険なウイルス(マルウェア)が隠れていないか、変な宛先に送ろうとしていないかを、仕分けレーンを流れる瞬間にスキャンします。
3. ルートの選定(SD-WAN): 「あ、このデータは動画ファイルだから、今混雑している専用線ではなく、直通の高速なインターネット回線に回そう!」と、その場の状況に合わせて瞬時に道を選びます。
これを別々の機器でやろうとすると、一度セキュリティ検査機を通ってから、別のルーターにデータを渡して……と手間がかかり、通信が遅くなってしまいます。だからこそ、ひとつのデータプレーン上で同時に処理することがめちゃくちゃ重要なのです。
—
3. 実務で触れる設定の世界:SD-WANとセキュリティの融合
「理屈は分かったけれど、実際の設定ファイルやコマンドはどうなっているの?」気になりますよね。
ここでは、実務でよく使われるエッジデバイスの設定をイメージしたサンプルを見てみましょう。小難しいところは飛ばして、日本語のコメントに注目してみてくださいね。
設定ファイルのサンプル(イメージ)
# SASEエッジデバイスのトラフィック制御とセキュリティ統合ポリシーの例
policy_routing:
- name: "cloud_app_optimal_route"
match:
# 対象となるアプリケーション(Microsoft 365など)
application: "Office365"
action:
# SD-WANの動的経路選択:遅延が最も少ない回線を自動で選ぶ
path_selection: "lowest_latency"
# 同時に、このデータプレーン上で次世代ファイアウォール(NGFW)の検査を有効化
security_inspection:
firewall: "enabled"
antivirus: "strict"
url_filtering: "enterprise_policy"
- name: "default_internet_route"
match:
application: "any"
action:
path_selection: "balanced"
security_inspection:
firewall: "enabled"
dns_security: "enabled"
このように、ひとつのルール(ポリシー)の中に「どの道を通すか(SD-WAN)」と「どうやって守るか(セキュリティ)」がセットで記述されています。データプレーンは、この指示に従って流れてくるデータを一網打尽に処理していくわけです。
—
4. トラブルシューティングの現場から:「あれ、繋がらない?」を解決する
最後に、現場でよくあるトラブルの視点も少しだけご紹介しておきます。
「新しいクラウドアプリを導入したのに、なぜか通信がすごく重い、あるいは繋がらない」という相談を受けたとき、インフラエンジニアはどこを見るでしょうか?
大体の場合、犯人は以下のどちらかです。
1. SD-WANの経路選択の勘違い: 「安全なルート」を優先するあまり、細い回線にデータを詰め込んでしまっている。
2. セキュリティ検査の渋滞: 厳しすぎるセキュリティ設定(ウイルススキャンやSSL復号など)をデータプレーンのその場で全部やろうとして、処理が追いつき(CPUが悲鳴を上げ)、荷物が詰まっている。
こんなときは、データプレーンのパケットがどこで引っかかっているのかを、次のようなコマンド(イメージ)で確認します。
# SASEエッジでのパケットの流路とセキュリティ処理状況を確認する診断コマンド
show sase-dataplane traffic-flow --detailed
# 【出力結果の読み解き方のヒント】
# - Drop Count(破棄された数)が増えていないか? -> セキュリティポリシーにブロックされていないか確認
# - Latency(遅延時間)が跳ね上がっていないか? -> SD-WANが選んだ回線の状態や、セキュリティ検査の負荷を確認
現場では、このように「道選び(SD-WAN)」と「見張り番(セキュリティ)」のバランスをいかに綺麗に保つかが、エンジニアの腕の見せ所となります。
—
まとめ
今回は、SASEにおけるSD-WANとセキュリティの統合、そしてその心臓部であるデータプレーンの役割についてお話ししました。
- SASEとSD-WANは、散らばった拠点やリモートワーカーを、安全かつ最速でクラウドへ繋ぐための「賢い交通整理システム」。
- データプレーンは、その現場で「安全チェック」と「ルート選定」を同時にこなす優秀な仕分けレーン。
最初は難しく見えるネットワーク技術も、私たちの日常の仕組みに置き換えてみると、グッと身近に感じられるようになったのではないでしょうか?
「一歩ずつ理解していきましょう!」の精神で、これからも一緒にインフラの世界を楽しんでいきましょうね。それでは、また次回の記事でお会いしましょう!
コメント