【入門編】 5GコアネットワークにおけるUPF(User Plane Function)のパケット転送とQoS enforcementの仕組み – 家庭用ネットワーク・IoT・モバイル通信実践ガイド

こんにちは!ネットワークやガジェットの裏側を覗くのが大好きな、技術メディアの主筆ライターです。

皆さんは普段、スマホで高画質な動画をサクサク見たり、オンラインゲームでラグのない快適なプレイを楽しんだりしていますよね。「5Gって本当に速いな〜」となんとなく恩恵を受けていると思いますが、その裏側でデータがどのように運ばれ、どのように「特等席」に案内されているか、気になったことはありませんか?

今回は、そんな次世代モバイル通信の心臓部である「5Gコアネットワーク」、その中でも実働部隊として汗を流すヒーロー「UPF(User Plane Function)」にスポットを当ててみたいと思います。

「UPFなんて聞いたことないよ」「なんだか難しそう……」というインフラ初学者の方も大丈夫! 一歩ずつ、身近な例えを交えながら優しく紐解いていきましょう!

—

5Gの裏側で何が起きている?UPFを「凄腕の郵便局員」に例えてみよう

これまでの4G(LTE)のネットワークも頑張ってくれていましたが、5Gはさらに超高速・大容量、そして超低遅延が求められます。この巨大なデータをさばくために、5Gの頭脳(コアネットワーク)は大きくスマートに生まれ変わりました。

その頭脳の中で、「ユーザーのデータ(動画、Webサイトのパケット、ゲームのデータなど)」を実際に受け取り、目的地へ猛スピードで仕分けて送り出すのが、今回主役のUPF(User Plane Function:ユーザープレーン機能)です。

イメージしてみてください。
あなたは「巨大な中央郵便局の仕分けフロア」に立っています。日本中(あるいは世界中)から、次々とトラックいっぱいの荷物(パケット)が到着します。
UPFは、まさにこの「超ウルトラ高速な仕分けスタッフ」なんです。

荷物の宛先を確認し、時には「これは急ぎの書留だから、一番早い特急トラックに乗せよう!(QoSの適用)」と判断し、次々と送り出していく。これがUPFの日常の仕事なんですね。

—

NG-Uインターフェースとパケットの旅

スマホから発信されたデータ電波は、基地局(gNB)でキャッチされます。そして、基地局とUPFの間を結ぶ専用道路を通って、UPFへとやってきます。この基地局とUPFを繋ぐ大切な道路の名前を、業界用語でNG-Uインターフェースと呼びます。

ここで、ちょっと面白いポイントがあります。
スマホの中身のデータは、そのままでは郵便局(UPF)まで運べません。なぜなら、スマホから出た荷物は、外側に「GTP-U」という特別なダンボール箱(トンネリングプロトコル)で二重に包まれているからです。

UPFの仕事は、まずこのダンボール箱を素早く開梱(あるいは新しい宛先ラベルに貼り替え)して、インターネットという名の「外の世界」へ送り出すこと。あるいはその逆の方向への変換です。

このパケット転送の仕組みを、少し現実的なネットワーク機器(LinuxのルーティングやUPFのシミュレーション)の設定をイメージしながら見てみましょう。

# 現場のエンジニアがよく目にする、UPF周辺のルーティングやトンネル設定のイメージ(Linux ipコマンドなど)
# 基地局側から届いたGTP-Uトンネル用の仮想インターフェース(gtp0)を作成し、IPを割り当てます
ip link add type gtp
ip link set gtp0 up

# ユーザープレーンのパケットをインターネット側へルーティングする設定
# 宛先アドレスに応じた転送経路(ルート)を明示的に指定します
ip route add 10.45.0.0/16 dev gtp0 proto kernel scope link

# ログ確認用:パケットが正しく転送されているかをリアルタイムでキャプチャするコマンド
tcpdump -i gtp0 -nn 'port 2152'
# ※ポート2152は、GTP-U(GPRS Tunnelling Protocol User Plane)の標準ポートです。
# 郵便局の「専用レーン番号」のようなものだと思ってください!

現場では、このようにして無数のパケットがgtp0のような仮想インターフェースを駆け抜けています。

—

渋滞知らずの秘密!UPFによる「QoS(Quality of Service)」の魔法

さて、UPFのもう一つの重要な仕事が、QoS(品質保証)の適用(QoS Enforcement)です。

想像してみてください。
金曜日の夜、郵便局に「大量のチラシ(一括ダウンロードのデータ)」と「お医者さんからの緊急の診断書(オンラインゲームや音声通話のデータ)」が同時に届きました。
もし、すべてを来た順に処理していたらどうなるでしょう? 緊急の診断書がチラシの山に埋もれてしまい、ゲームがカクついたり通話が途切れたりしてしまいますよね。

ここでUPFの出番です。
UPFは、やってきたパケットの「ラベル(QoSフローID:5QIなど)」を瞬時に読み取り、次のように交通整理を行います。

1. VIP待遇レーン(低遅延・高優先): オンラインゲームや音声通話のパケット。迷わず最優先の特急便に乗せる。
2. 通常レーン(ベストエフォート): Webブラウジングや動画視聴のパケット。順番にしっかり届ける。
3. 制限レーン: 通信容量を使い切ったユーザーのパケット。速度制限のルールに従って少しゆっくり進めてもらう。

このポリシー制御は、5Gコアの制御部(SMF:Session Management Function)から「こういうルールで仕分けてね」という指示(PFCPというプロコルを使います)をあらかじめ受けて、UPFが現場で忠実に実行しているんです。

設定のイメージを覗いてみよう

Open5GSやフリーの5Gコアなどのコンフィグファイル(YAML形式)をイメージしてみましょう。UPFがどのようなポリシーでトラフィックを制御するかの一端が垣間見えます。

# UPFおよびSMF間でやり取りされるQoSポリシー設定の概念サンプル
session_rules:
  - qfi: 9 # 標準的なベストエフォート通信(Web閲覧など)
    allocation_and_retention_priority:
      priority_level: 15
      pre_emption_capability: "NOT_PREEMPT"
      pre_emption_vulnerability: "NOT_PREEMPTABLE"
    mbr: # Maximum Bit Rate(最大通信速度)の定義
      ul: "50 Mbps" # 上り(アップリンク)
      dl: "200 Mbps" # 下り(ダウンリンク)

  - qfi: 5 # 低遅延が求められる重要なトラフィック(IMS音声やシグナリング等)
    allocation_and_retention_priority:
      priority_level: 1
      pre_emption_capability: "MAY_PREEMPT"
      pre_emption_vulnerability: "PREEMPTABLE"
    mbr:
      ul: "100 Mbps"
      dl: "100 Mbps"

このように、パケット一つひとつに付与されたqfi(QoS Flow Identifier)という番号を見て、UPFは「このパケットは時速200kmで走らせよう」「こっちは制限しよう」といったコントロールをミリ秒単位で行っています。

—

現場のエンジニアが語る、UPF運用の泥臭さと醍醐味

教科書や仕様書には綺麗に「パケットを転送します」「QoSを適用します」と書いてありますが、実際の現場ではなかなか一筋縄ではいきません。

例えば、

  • 「特定の動画配信サービスのトラフィックだけ、なぜか想定したQoSレーンから漏れてしまう……パケット検査(DPI)のルールを見直さなきゃ!」
  • 「基地局側の回線が一時的に細くなったとき、UPF側でバッファ溢れ(パケットロス)を起こしてしまった。バッファサイズのチューニングを急ごう」

などなど、ネットワークの現場は常に生きた生き物のように変化します。
だからこそ、パケットが今どこを通り、UPFの内部でどう処理されているのかを tcpdump や監視ツールで追いかけ、「あ、ここでうまくQoSが効いてパケットがスムーズに流れたぞ!」と確認できた瞬間は、エンジニアとして最高に痺れる瞬間なんです。

—

まとめ:見えないインフラが私たちの日常を支えている

今回は、5Gコアネットワークの要であるUPFのパケット転送とQoS enforcementの仕組みについて、郵便配達の例えを交えてお話ししました。

  • UPFは、基地局とインターネットの間で超高速に荷物(パケット)を仕分ける現場のプロフェッショナル!
  • NG-Uインターフェースを介して、GTP-Uというトンネルで安全にデータが運ばれている。
  • SMFからの指示を受け取り、QFIなどのラベルを見てQoS(品質保証)をリアルタイムに適用している。

私たちが普段、ストレスなくスマホを使えているのは、こうしたバックグラウンドでUPFが休むことなく緻密な交通整理をしてくれているおかげなんですね。

ネットワークやモバイル通信の世界は、一見すると難解な用語の山ですが、一つひとつの機能を身近なものに置き換えていくと、パケットたちが生き生きと走り回る姿が見えてきて本当にワクワクします。

この記事が、あなたのインフラ学習や日々のエンジニアリングのちょっとしたヒントや楽しみになれば嬉しいです。それではまた、次のネットワークの旅でお会いしましょう!

コメント

タイトルとURLをコピーしました